Armikrog.の背景ストーリー その6

こんにちは、いちすけです。
私は本を読むのも少し好きなのですが、最近はSF小説に挑戦したいな…と思い、とりあえずかの有名な「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を読んでみようかと思っています。いいですよね、SF。AxiomVergeもあの世界観が好きだったので、SF小説は相性がいいのではと思っています。「三体」も読みたいです。あれは面白いらしいので。

さて、今回もArmikrog.の背景ストーリーの和訳を進めていきましょう。
前回分はこちらからどうぞ。初回はこちらからです。

Armikrog.本編はこちらです。ちなみに背景ストーリー自体は殆どネタバレにならないため、特に【ネタバレ】をつけてはおりません。

それでは、いきましょう。
(※本文中の○はメ木几又の漢字を伏せたものです。)

脱出

ディッチ・モンガーズのベースキャンプは荒らされていた。寝袋はバラバラにされ、詰め物は散乱していた。我々の私物は床の上に打ち捨てられていた。アボミネートの言う通り、彼らは我々を生かしておくつもりがなかったのだ。

ウィーブは予備のヘッドライトを持っていて、読書灯として使っていたことを思い出した。私物の山の中からそれを探していると、誇らしげな両親とその子供が写っている写真を見つけた。おそらくこれはウィーブの子供の頃の写真だろう。写真の中の彼は、笑顔でボールを持っていた。

山を漁っていると、私の手が毛むくじゃらで温かいものに触れた。それはウィーブのペットであるクラットの死骸だった。まだ柔らかく、死後硬直は始まっていないようだ。ウィーブはクラットを自分の子供のように可愛がって世話をしていた。だが、白いスーツの男たちにとってはただの邪魔だった。ウィーブのヘッドライトを見つけ、ポケットにしまった。

キャンプ内を見渡すと、我々の持ち物の少なさに改めて愕然とした。検査官がここを捜索するのは楽な仕事だったことだろう。我々が鉱山で過ごしてきた日々は何だったのだ。私がヘルメットに隠しているこの紫色の物体が一体何だと言うのだろう。検査官たちは、我々を労働者ではなく何でもない消耗品としてしか見ていなかった。結果、我々は皆お役御免となったわけだ。

中二階への通路を進むと、他の鉱夫たちが大勢の白スーツたちに尋問を受けていた。鉱山のあらゆる階層の管理者が、テントや便所の中まで捜索に協力していた。白スーツの男たちは、鉱夫たちの捜査に集中していたので、私に気づくことはなかった。

鉱山の奥深くから最上階に向けてサイレンが鳴り響いた。死体が見つかってしまったらしい。鉱山全体が封鎖されてしまった。白スーツの男たちはコートのポケットから武器を取り出した。その武器は先端に針が付いた機械的なアームのようなもので、手のひらに折りたためるようになっているようだ。

検査官が、私に腹ばいになるように叫びながら近づいてきた。私の本能は逃げろと言っていたが、恐怖に身体を支配された私は言うとおりにするしかなかった。地面に慌てて伏せると、彼は私の膝を蹴り飛ばした。そのとき私はアボミネートから貰ったものを思い出した。白スーツが目を逸らした隙に、私は血まみれの靴下から、切断されたアボミネートの指を取り出した。私はそれを白スーツのブーツに当て、肉体に触れるまで足の上を滑らせた。白スーツの男はぼろ人形のように地面に崩れ落ちた。

私は彼の手のひらから慎重に針の武器を外し、自らの手に装備した。拳を握ると、針は中に収納され、持ち主には危害を加えない作りのようだ。しかし、ひとたび手を開けば、アームが20cmほど伸び、そこにスズメバチのように茶色い縞模様の針が突き出るようになっていた。

私は立ち上がり走った。何人かの白スーツの男たちのそばを走り抜け、見つかる前に針で始末した。また、アボミネートの指で多くの人を始末してしまった。それは難しいことではなかったが、私の良心は酷く痛んだ。私は今まで、命を賭けたり、生きるためには○すしかないような状況になったことはなかった。しかし、多くの人を○してしまったことで、私の精神はひどく混乱している。正当防衛で数人を○してしまうことは許されるかもしれない。だが、逃げ出すために100人もの人を○すのは、許されるのだろうか。

上層階に上がるにつれて、検査官が少なくなり、兵士が増えていった。彼らは国軍の兵たちだ。彼らは白スーツ男たちにでさえ完全な遵守を求めていた。白スーツの男の一人が命令をはっきりと聞きとれなかったため説明を求めると、兵士は武器の尻の部分で彼を地面に叩き伏せた。彼らが近づてくる物音が聞こえた私は、ウィーブスの予備のライトを囮として穴に向かって投げ捨て、自分のライトの灯りを消した。私は死んだふりをして地面に伏せ、壁に沿って身体を伸ばした。兵士たちは囮のライトを調べるため、私の横を通り過ぎていった。彼らがライトの元にたどり着いたころには、私はそこから居なくなっていた。

私はもう地表近くまで来ていた。私はスポットライトの光が届かぬよう壁際に身を隠した。私は手のひらの針の武器を見下ろし、それを二度と使わぬよう心に誓った。アボミネートの指を持っているのに、針の武器を持つ必要はない。兵士の小隊がホバービークルに飛び乗り、ちょうど私が来た方向に向かって進んで行った。彼らのような検査官や軍が、いつもすぐ近くに居たのだと考えると奇妙な話だった。私の考えはこうだ。鉱山を運営していた会社は、元から空白板の採掘が目的ではなかったのだ。そうでもなければ、彼らはこれほど深く掘り進める必要はなかっただろう。地表近くには、何年もの間採掘を続けられるだけの鉱山がたくさんあったのだから。彼らは私がヘルメットに隠しているもの、つまりは「山の心」を探して、深く掘り進めていったに違いない。

最後の兵士がシャフトの下に消えていった。私はホバービークルの下に潜りこみ、しがみ付ける場所を探した。そして、ホバービークルは動き出した。しばらくすると、地表に出てきた。夜だったので、太陽は出ていなかったが、涼しく新鮮な空気は素晴らしいものだった。

私は鉱山から解放されたのだ。


それでは、今回はこの辺りで。
また来てくださいね。

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