Armikrog.の背景ストーリー その8

こんにちは、いちすけです。
Armikrog.のやり直しは無事クリアできました。そして、字幕がでなかった理由も思い出しました。しかし、ツルク像にどうして字幕を付けてくれなかったのか…。

さて、今回はArmikrog.の背景ストーリーの和訳の続きになります。
前回分はこちらからどうぞ。初回はこちらから見ることができます。

Armikrog.本編はこちら。基本的には字幕でストーリーの大筋は分かるはずです。

それでは、お楽しみください。

孤独な逃亡

基地の周辺には、およそ30m間隔に警備員が配置されていた。例の針の武器を手につけている者もいれば、ライフルを持っている者もいる。彼らに見つかることなくここを通り抜けるのは難しそうだ。私はアボミネートの指を包んだ靴下を握り、一番近くにいた警備員のところまで何食わぬ顔で歩いて行った。警備員は私を見るなりライフルを構え、声を荒げた。

「それ以上近づくんじゃない。」

「ジョクソン・レックソンからの命令だ。」私は両手を挙げて言った。

他の警備員たちは、なんの騒ぎだとこちらを振り返った。

警備員は明らかにこちらを疑っているようだが、でまかせはこれ以上浮かばない。彼を挟んで向こう側には森が見えている。隠れるには絶好の場所になるだろう。森に入りさえすれば、私は自由になれるはずだ。

私は彼に叫んだ。「私の話は聞いておけ!後悔するぞ!」ハッタリは本気でなければ効果がない。

警備員は私の顔を明るいライトで照らしながら言った。「お前は鉱夫か?身分証を見せてみろ。」

私は指をくるんだ靴下を彼に向かって放ると、彼はそれをキャッチした。

「これは何だ?」

「私の身分証さ。」

警備員はまるめた靴下を開き、中に手を突っ込んだ。そのまま彼がぐったりと地面に倒れた時、私はすでに彼に向かって走り出していた。周囲の警備員は状況が掴めずぽかんとしている隙に、私は靴下をすくい上げ、森に向かって全力で走った。

警備員も我に返り行動を開始した。弾丸やダーツが私の近くを通り抜けていったが、彼らは攻撃を躊躇っていたようだ。狙いが付けられる前に私は森に到達し、完全な暗闇の中へ滑り込んだ。

「散らばれ!後を追うんだ!」

私は森の奥深くへと進む。ヘッドライトをオンにして道を照らし、そして隠れるように消した。背後から兵士たちがやってくる音が聞こえる。

開けた場所に出ると、そこは深い渓谷の崖だった。崖の端で足を滑らせつつも、なんとかギリギリで踏みとどまる。後ろからは兵士たちが近づいてくる音が聞こえる。私はヘルメットから紫色の毛玉ーまだ脈打っているーを取り出し、ポケットにつっこんだ。そして、崖へとヘッドランプを投げた。ライトの光がちょうど見えるが、ヘルメット自体は見えない場所に落ちた。

私は渓谷の淵に沿って、低木の茂みといくつかの岩の上を左方向に向かって走った。我々の仲間はほとんど右利きだった。私たちは左から右に向かって字を書くので、警備員たちが私が右に向かって進んだと思うように願った。ヘッドライトもないため、渓谷に落ちてしまわないよう運任せで進む。警備員たちが開けた場所に来るまで、あとほんの数秒しかない。

2人の警備員が開けた場所に来たため、私は地面に伏せた。私は四つんばいのままじっと身動きをせず、彼らが渓谷の端から崖下に落ちているヘッドライトの灯りを見ているのを、横から見ていた。私の肺は酸素を求めていたが、音がしないようにゆっくりと呼吸をしなければならない。警備員の片方が言った「やつは落ちたのか? 灯りが動いていない。」

もう片方が「やつは落ちたか、落ちたと思わせようとしているかのどちらかだろう。」と言ったので、私は彼らからゆっくりと離れた。

もし私が落ちていれば、怪我をしていて逃げられないと判断したのだろう。私が落ちたフリをしている可能性を潰すために、周辺の捜索を始めた。兵士たちは私の策略に騙されたわけではなさそうだが、確信を持っていたわけではないようだ。彼らは私が落ちているかどうかはっきりと確認できていないため、私が下にいるかもしれないという可能性も捨てきれていなかった。彼らにはライトがあり、私にはない。片方は私から遠ざかるように右へ、もう片方は私へ近づくように右へ散開した。

私は腹ばいになったまま草むらの中で、私の方に近づいてきた警備員が通り過ぎるのを待った。彼は草むらをたったと走りながら、昆虫やシマリスを怖がらせていた。彼が私の前を通り過ぎるや否や、私は飛び上がり、アボミネートの指で彼の首の後ろに触れた。彼は静かに地面に倒れた。私は低い姿勢を保ちながら、木陰に戻ろうとした。目は暗闇に慣れ、鉱山で慣れ親しんだ暗闇に比べれば明るいぐらいだった。

静寂の中、風にそよぐ草の葉や木々の軋みの音が聞こえてくる。しかし私は、目の前の白い雄鹿ような生き物の蹄の音を聞き逃してしまっていた。ジョクソンは、この獣のことを化け物だと話していたことがある。何世代にも渡ってハンターを退けてきた伝説のイールクだ。彼は非常に大きな角を持っていたが、同族と同じような毛皮ではなく光沢のある鱗に覆われていたため、同族にすら嫌悪感を抱かれていた。また彼は親愛の情が高ぶると電撃を放つという、超自然的な生態を持っていた。それゆえに彼は愛を、そして友情を知らない。彼の一族は彼を見捨てなければならなかった。彼は失恋の偉大な象徴であり、その見た目からしても、決して侮ることはできない強力な生き物であった。

イールクは私に向かって頭を下げた。角が私の顔の前まで下りてきて、棘の間に小さなポップ音と電気の波紋を感じた。なぜ理解できたのか説明できないが、彼はジョクソン・レックソンに復讐しようとしている、と感じた。私の元上司の心を打ち砕くつもりだったようだ。イールクは向き直り、私についてこいとでも言うかのように森の中に飛び込んでいった。彼が暗闇に姿を消すと同時に、私の背後の開けた場所から多くの警備員の喧騒が聞こえてきた。

3人の警備員が渓谷まで走ってきて、それから扇状に散開した。うち1人が最初の警備員の死体につまずき、他の警備員に声をかけている。私は葉っぱの山に飛び込み、身を隠した。日中は使い物にならない隠れ場所だったが、夜の暗闇の中では十分その効果を発揮した。彼らは全員見当違いの方向に散っていった。

私は静かになったのを見計らうと、葉っぱの山から這いだし、イールクの後を追って森の奥へと進んで行った。

その瞬間、暗闇の中で、私はひどい孤独感に襲われた。鉱山に居たときと何も変わらない。森の中でさえ自由に歩くことができない。メーヴァの姿が脳裏に浮かんだが、それすらも慰めにならなかった。私の心は病んでいたのだ。誰も私を愛してくれず、私も誰も愛していなかった。私よりよほどあの豚のような犬…クラットの方が愛されていた。

私は愛を知ることができるだろうか。

誰か私を救ってくれ。私を見つけてくれ。そして、私を愛してくれ。


それでは、今回はこの辺りで。
また来てくださいね。

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